「平和といのちをつなぐ碑」(九条顕彰碑)の取り組み 

滋賀宗平協・寺本了恵



1.除幕式に至る経過

 2025年は戦後80年、被爆80年の年であり、この年にふさわしい取り組みをしようと、2024年7月19日、滋賀憲法集会実行委員会(19団体)で協議されました。その中で、全国で「憲法九条の碑」の建設が進んでいることや九条の碑の建設を望む声も聞かれることから、滋賀県初の「九条の碑」を建設する方向が確認されました。 
 2025年1月23日、実行委員会と滋賀宗教者平和協議会(事務局長 木田昌志)が三井寺の福家俊彦長史と協議され、三井寺に九条顕彰碑を建てることや碑の名称を決定しました。
 2025年3月27日、三井寺に「平和といのちをつなぐ碑(九条顕彰碑)を建てる会」結成の呼びかけについて記者会見(県庁記者会見室)を行い、34名の呼びかけ人の名前が公表されました。
2025年4月20日「平和といのちをつなぐ碑を建てる会」結成総会(三井寺寺務所講堂)が開催され、呼びかけ人代表挨拶、経過説明、福家俊彦三井寺長吏講話、役員体制提案、代表世話人・世話人紹介、今後の取り組みの提起、県民の皆さんへの訴えなどを論議し全員で確認し、募金活動が開始されました。
 2025年7月6日 三井寺に「平和といのちをつなぐ碑」を建てる会代表世話人・事務局会議が開催されました。募金の進行状況報告や碑の制作の具体化をはかり、ニュースの発行、会の独自イベントの開催、碑の制作、建立場所について決定されました。
 2025年8月6日 独自のイベントとして「戦後80年平和といのちをつなぐ集い」(三井寺観音堂)を会主催で開催されました。福家長吏を囲んで、近江兄弟社高校演劇部2人と県職員、民青の現役世代5人での座談会に約50人の参加がありました。
 2025年9月6日 三井寺に「平和といのちをつなぐ碑」を建てる会世話人会(三井寺寺務所)が開催され、募金額は目標の300万円を超え、募金者1,000人超たことがが報告されました。そして、11月3日の除幕式まで取り組み継続、完成除幕式の進行・記念音楽祭・その後の懇親会(食事会)について協議決定されました。


2.「平和といのちをつなぐ碑」完成除幕式典、記念音楽会開催(護法善神堂前広場)

 2025年11月3日、木枯らし1号が吹くあいにくの天候の中、平和といのちをつなぐ碑(九条顕彰碑)の完成除幕式があり、200人超が参加し完成を祝いました。
 福家俊彦長吏は「碑の建設はゴールでは無い、新たな出発の場である。立場は違っても平和を求める気持ちは多くの人が共有し、ともに歩んでいける。みなさんが活動のシンボルとして長く見守っていただければ」と述べました。
 建てる会の土井裕明代表世話人(滋賀・九条の会)は「三井寺にはたくさんの観光客、参拝客が来る。この碑を見てちょっと立ち止まって考えていただけたら大成功だ」とあいさつ。藤澤直広事務局長(滋賀首長九条の会)が経過報告し、三日月大造知事と佐藤健司大津市長、フリージャーナリスト伊藤千尋さんのお祝いのメッセージが代読されました。
 その後、世話人らが「戦争のない世界、戦争放棄の国が、一日も早く実現するよう新たな決意と誓い」を込めて勢いよく綱を引くと、御影石の石碑が姿を現し、参加者の拍手に包まれました。
 除幕の後、滋賀宗平協の会員で地元「逢坂・中央学区九条の会」共同代表の三上章道師が、「明治8年に滋賀県初の陸軍の連隊が設置された場所が、三井寺の境内地でもあった目の前の一帯でした。そこに建立されたことは最もふさわしい場所だと思うと共に、『今こそ九条を』と活動の背中を押してくれることを願っています」と喜びの言葉を述べられました。
 その後、石碑を建てるだけで終わりではなく、平和への願いを共有し、大きく運動を広げることに取り組みの目的があるとして、東昌子さん(滋賀民主医療機関連合会長)が「『新しい戦前』にしないために、平和と憲法九条を守る活動を続け、発展させよう」とのアピールを読み上げ、参加者が拍手で応えました。
 閉会あいさつでは、平尾道雄氏(滋賀首長九条の会共同代表)が「自民党と維新の新政権は九条改憲に向けての取り組みを具体化し、来年の国会への提案を考えているようだ。私たちはまなじりを決して立ち向かって行かねばならない」と決意を込め、式典は終了しました。
 石碑の表面には福家氏が写した憲法九条の条文が刻まれ、裏面にはユネスコ憲章にも触れた建立の思いと願いの文章が刻まれています。設置場所は三井寺境内の護法善神堂前の広場。募金者は1350人を超え、募金額も600万円超となりました。
 式典に続いて記念音楽会が開かれ、3組のアーティストが平和への思いを込めた歌声を響かせました。音楽会終了時頃には雨もやみ、青空が広がって、最後は「琵琶湖周航の歌」を参加者全員で大きな声で歌ってつどいを終了しました。

3.交流懇親昼食会(れすとらん風月)

 除幕式終了後場所を移し、交流昼食会が開催され、呼びかけ団体からの参加者が100名ほど集まりました。「九条を守る」この一点の思いで参加された方々であるものの、ほとんどが初顔合わせ。こんなにもたくさんの方々がそれぞれに活動しておられたのだとの思いを強くしました。
 「私のつれあいは、早くから『九条の碑』の建設を願っていて、闘病を続けながら建立を待ち焦がれていました。しかし、残念ながら8月に命終えていきました。今日は大変うれしい日です。」と喜びの言葉を述べられた方もありました。
 多くの方が、現政権の政策方向に危惧し、それに立ち向かおうと表明され、今後の活動の方向を確認するありがたい場になったと感じました。

(写真提供・滋賀民報社)