日本宗教者平和協議会の発表した声明・談話です。

2023年831

「ALPS処理水」海洋放出についての抗議声明



日本宗教者平和協議会
事務局長 森修覚

 日本宗教者平和協議会は、東京電力福島第一原発で発生する大量の汚染水を多核種除去施設(ALPS)にかけた、いわゆる「ALPS処理水」を海洋に放出を24日強行しました。
漁業関係者及び国民との約束を反故にした「放出」に厳重に抗議します。

政府は、東京電力福島第一原発の「ALPS処理水」に含まれる放射性核種トリチウムは自然界にも存在するもので、福島第一原発に限らず、稼働中のどの原発からも排出されているのだから問題ないと説明します。
 しかしながら生物の体内に入ったトリチウムは、化学的性質が水素と同じであるために細胞内に取り込まれて長く止まり、内部被曝を行い、DNAを破壊することが指摘されています。海に流されたトリチウムは、こうして継続的に生態環境に入り込み、食物連鎖によって蓄積し、濃縮されていくことになります。世界中の原発から放出され続けるトリチウムを、いかなる理由でもこれ以上海洋中に廃棄すべきではありません。

「ALPS処理水」には、溶け落ちた燃料デブリに直に触れた汚染水が含まれています。事実、「ALPS処理水」からはトリチウムだけではなく、ALPSでは除去できなかった様々な放射性物質が告示濃度を超えて残留していたことが、2018年8月、メディアによって明らかになりました。しかもその後、現在タンクに貯められている「ALPS処理水」の約7割に、排出基準を超えた放射線核種が含まれていることも明らかになりました。政府は地元住民、漁業関係者、東アジア、太平洋諸島など、国内外の人々の抗議の声に謙虚に耳を傾けるべきです。

 海洋放出をいつまで行い、最終的にどれだけの量の放射性物質を海に流し、どれだけ海を汚すのか、ということです。しかも廃炉の見通しも立たない現在汚染水は増え続けています。燃料デブリの取り出しが完了しない限り冷却水は必要なのに、その作業は大幅に遅れ、その工法さえ確定していません。汚染水最大の原因である地下水、雨水の流入を止めることもできていません。海に流される放射性物質の総量は明らかにされていません。

 あらゆる環境破壊は、少しなら大丈夫、という私たちの怠慢から起きた問題です。放射性物質もまた、一日あたり、魚一匹あたりの線量が少ないから大丈夫、ということではありません。放射性物質は臭いも痛みもなく、少しずつ私たちのいのちを侵食し、いずれ取り返しのつかない生態環境破壊を生むことになるでしょう。「ALPS処理水」海洋「放出」は、私たちの「家」である地球、青い海と豊かな山野への暴力です。この暴挙を決して許さない決意は、未来の地球、未来の子どもたちに対する私たちの責任、倫理の問題なのです。

 日本宗教者平和協議会は、政府の「ALPS処理水海洋放出」に厳重に抗議します。

稀代の悪法=入管法改定案の
参院法務委員会での採択強行に抗議し、即時撤回を求めます


2023年6月8日
日本宗教者平和協議会   事務局長  森 修覚

 本日、参議院法務委員会(杉久武委員長=公明党)で「出入国管理及び難民認定法」(以下、入管法改定案)が自民、公明、日本維新の会、国民民主の賛成多数で採択されました。採決強行に強く抗議し、その撤回・廃案を求めます。共生社会の実現へ、宗教者が沈黙することは許されないと考えます。
 政府は、昨年5月に大きな批判を浴びて実質的に廃案となった入管法改定案を、3回目以降の難民申請者の強制送還を可能とし、退去命令に従わない人に刑事罰「送還忌避罪」を科し、「監理措置」制度を創設するなどその基本を変えずに閣議決定し再び国会に提出してきました。
日本で暮らす外国人のいのちを危険にさらし、民主主義を否定する入管法改定案は、審議すればするほど立法根拠は崩れています。また審議の過程で、「わが国に本当の難民はいない」との柳瀬房子難民審査参与員の人命にかかわる難民審査の対面審査数など問題が噴出し、法案の根幹を揺るがす問題が次々と表面化しています。先日も大阪入管の医師による酩酊診療報告書、「送還忌避者」の送還目標(ノルマ)を記した一覧表などが日本共産党の仁比聡平参院議員によって公表されるなど、ずさんな処理、人権意識の希薄さに怒りを禁じ得ません。
母国におられずやむなく出国し、帰国できずに日本に在留し、難民申請をしている外国籍住民を強制送還させる改定案を断じて容認することはできません。
21年3月、名古屋入管施設に収容中にむごい仕方で死においやられたスリランカのウィシュマさんの事件への根本的反省がないことが示されていると言わざるを得ません。入管と法務省は、なぜ、その管理下で多数の人がいのちを落としたか、その人権侵害構造を遺族と国民に明らかにし、謝罪し改善すべきです。
 岸田首相はことあるごとに他国に対して「法の支配」と「人権の尊重」を訴え求めていながら、自国にあっては国際人権法を守ろうとしない態度をとることは断じて許されません。
 基本的人権はすべての人が生まれながらにして享受することができる侵すことのできない権利です。平和といのちの問題が軽視されており、宗教者の使命が試されています。憲法無視、人権無視の入管法改定案の撤回とその廃案を重ねて強く求めるものです。

広島市教委「平和教材」からの第五福竜丸削除に抗議し撤回を求めます

                          
 2023年3月3日 
        日本宗教者平和協議会   事務局長  森 修覚

 広島市教育委員会は、中学生向けの平和教材「ひろしま平和ノート」から、米国の水爆実験で被爆した静岡県焼津市のマグロ漁船「第五福竜丸」の記述を被爆実態を継承する学習内容でなく、被ばくの実相が充分に伝わらないとして2023年度から削除することを決めました。
 日本宗教者平和協議会(日本宗平協)は、市教委の決定に強く抗議し、その撤回を求めます。
 第五福竜丸は1954年3月1日、アメリカの太平洋ビキニ環礁での水爆実験で操業中に被災し、乗組員23人が放射性物質を含んだ「死の灰」を浴びて半年後に無線長の久保山愛吉さんが「原水爆の犠牲者は私を最後にしてほしい」という言葉を遺して亡くなりました。広島、長崎につづく3度の原水爆の被害は日本国民に不安と怒りを巻き起こし、原水爆の禁止を求める署名運動が全国で取り組まれ、今日までつづく人類的な原水爆禁止運動の転機、出発点となりました。
 日本宗平協は、1964年から久保山愛吉さんの墓前祭を主催し「人類は核兵器と共存できない」と被爆者とともに核兵器のない世界の実現を求めつづけてきました。
 先日の墓前祭では、広島市長はじめ各界の諸団体代表が、碑前で久保山さんの願いを実現するために、核兵器禁止条約に参加する日本、憲法をいかす日本にする決意とともに、誓いを新たにしました。
 広島市立小学校で使われる平和教育の教材から「被爆の実相に迫りにくい」との理由で戦争と原爆の悲惨さ、平和を訴え力強く明るく生きるゲンを描いた故中沢啓治さんの『はだしのゲン』を外すことを決めています。
 「専守防衛」を投げ捨て「敵基地攻撃能力」の保有、防衛費倍増という大軍拡・大増税で「戦争する国」づくりにひた走る岸田文雄政権にとって不都合ゆえの忖度なのでしょうか。ウクライナでのロシアによる無法な侵略によっての深刻な被害、核兵器使用の威嚇など緊張が続いています。
 一方で、北朝鮮による核・ミサイル開発や中国の海洋進出など東アジアの緊張を最大限に利用してアメリカは西側同盟の結束を図り、軍事ブロックの拡大と人類絶滅の道具である核兵器を「抑止力」などと偽って、緊張と対立を深めています。
 人々を殺し、文化や歴史まで破壊するのが戦争です。武力で国を守ることはできません。ましてや絶滅だけを目的にした核兵器で人を救うことなどできません。核兵器は絶対悪の兵器です。核兵器が人類に何をもたらしたのか過去の事実を学び伝えなければなりません。核兵器のない平和で公正な世界へ被爆者とともに前進する決意です。

アピール


 69年前の1954年3月1日、アメリカの中部太平洋ビキニ環礁でおこなった水爆実験で焼津を母港とするマグロ漁船・第五福竜丸をはじめ操業していた多くの日本漁船やマーシャル諸島の島民が「死の灰」を浴び、広島、長崎につづく三度の筆舌に尽くしがたい核兵器による被害をこうむりました。私たちは1964年以来、久保山愛吉さんの墓前祭を主催し、「人類は核兵器と共存できない」と被爆者とともに核兵器のない世界の実現を求めつづけてきました。

2021年1月22日に発効した核兵器禁止条約は、現在、署名は92カ国、批准は68カ国へと前進しています。一方、核大国ロシアによるウクライナへの侵攻から一年が経過し、ロシア軍による無法な攻撃による深刻な被害、核使用の威嚇が続いています。即時停戦、撤退を求めるものです。また、北朝鮮による核・ミサイル開発や中国の海洋進出など東アジアの緊張などをも最大限に利用してアメリカは西側同盟の結束を図り、軍事ブロックの拡大と人類絶滅の道具である核兵器を「抑止力」などと偽って、緊張と対立を深めています。

核兵器禁止条約に背を向け続ける岸田政権は、「専守防衛」を投げ捨て、自ら戦後日本の安全保障政策の大転換とする「戦争国家」の道に突き進もうとしています。「安保関連3文書」(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)による軍備の大増強、「敵基地攻撃能力」の保有が明記され、憲法をじゅうりんし、5年間で43兆円もの軍事費を投入しようとしています。これは、日米両首脳が「日本の反撃能力及びその他の能力の開発及び効果的な運用について協力を強化する」と表明したように、日本がアメリカと融合した軍事作戦をとり、アメリカの核兵器使用政策に加担するものです。「敵基地攻撃」の際には、沖縄の戦場化とともに全国の原発が相手国の反撃・報復の標的となることは明らかです。軍拡で戦争は防げません。日本政府の対米追随の戦争加担と大軍拡への大暴走をやめさせ、核戦争を招く「核の傘」ではなく、憲法9条の原点に立ち返り、核兵器禁止条約に率先して参加し、核兵器のない世界の実現に努めるべきです。

東京電力福島第一原発事故からまもなく12年を迎えようとしています。岸田政権は事故の教訓を踏みにじって運転期間を最大60年超への延長、次世代炉による新増設など原発の最大源活用を盛り込んだ「GX(グリーントランスフォーメーション)」実現に向けた基本方針を閣議決定しました。地震の恐ろしさは阪神大震災や今回のトルコ南部地震で、地震と津波の恐怖は東日本大震災と福島原発事故で思い知らされました、危険な原発はゼロにするしか生き残るべき道はありません。戦争でなくても原発が危険なことは福島原発事故で明らかです。
50年来原発を批判し活動をつづけてこられた福島県楢葉町の宝鏡寺の早川篤雄住職が昨年暮れにお亡くなりになりました。早川さんからの「なんとして原発事故の国の責任をはっきり認めさせて欲しい」「福島第一原発の廃炉には100年かかる。これをなんとかして欲しい」という託された二つの遺言を実現できるように努めましょう。
3月11日の宝鏡寺の「非核の火」「原発悔恨・伝言の碑」前での誓いのつどいの成功と「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館」の存続・発展を確かなものとしましょう。

2023年2月28
3・1ビキニデー日本宗教者平和運動交流集会

集会アピール


 私たちは国連軍縮週間に呼応して北海道・朱鞠内で日本宗教者平和会議を開催しました。
ロシアによるウクライナ侵略のもと、プーチン大統領による核兵器使用の威嚇が繰り返されています。また、アメリカを中心とするNATOなどが抑止力を口実として核態勢の強化など、核兵器が使われる危険が高まっています。私たちは、被爆者とともに核兵器の残虐性、非人道性を告発し、核兵器禁止条約を力に、国際紛争での武力行使と核兵器使用の脅威を永久に取り除き、核兵器のない世界の実現は将来世代への最大の贈り物だと考えます。戦争のない世界という共通の目標を達成する決意を新たにしました。
 国民の怒りが渦巻くなか岸田内閣は、民主主義の根幹である憲法14条の「法の下の平等」に反し、個人の思想・信条の自由を奪い、国民に弔意を強制することにつながり、憲法19条の思想・良心の自由=内心の自由に反する憲法違反の安倍元首相の国葬を強行しました。
「国葬」はそもそも法的根拠がなく、法治主義・立憲主義に反するものです。人の死を悼み弔うという個人の内面的な営みに、国家が介入することは許されません。
岸信介元首相以来、安倍元首相に至るまで、自民党などが半世紀余に及び霊感商法などで人生と家族の破産や崩壊をもたらしてきた反社会的カルト集団である旧統一協会との深い癒着が浮き彫りとなっています。政教分離原則という憲法の大原則のもと政治とカルト集団との癒着の真相が徹底的に究明されなければなりません。
私たち日本の宗教者は、日本軍国主義による中国大陸や朝鮮半島などへの武力による侵略に迎合し、「大東亜共栄圏」の支配構想と結合し、植民地伝道をすすめるなどの過ちを犯しました。敗戦直後に真摯な反省がなされるべきであった「戦争責任」への懺悔を怠り、その罪過から眼をそらしてきた怠慢を悔いなければなりません。
国家からの圧力があったとはいえ、宗教界は「殺してはならない」と言いながら、あの侵略戦争にすすんで協力、加担した歴史の厳しい反省にもとづいて、日本に強制連行され強制労働のなかで亡くなり更に殺害された朝鮮人や中国人の遺骨発掘と収集、遺族への返還という実践に取り組んできました。
宗教者は寛容であると同時に、平和に対しては真剣でなければなりません。人間が人間として尊重され、日本と東アジアの未来のために戦争や不正、抑圧もなく、人間疎外からの解放、環境破壊の阻止などとともに、いのちをまもる共同のいっそうの前進をはかりましょう。
 侵略戦争の反省の上に確立された恒久平和と、その実現のために戦争と武力の放棄を表明した憲法9条に立ち返ること、その精神を世界に向かって主張することこそ私たちに求められている使命であり、己の信仰にかけて守り抜かなければならないものではないでしょうか。さらに、日本の植民地支配の過去を反省し、被害を受けた人や遺族に謝罪し、補償し、和解を実現するために努力しなければなりません。
 昨年10月から「笹の墓標展示館巡回展」が全国各地を巡回中です。巡回展を成功させ、資料館としての展示館の再生・再建運動を成功させましょう。
未来に向けて、ここ北海道から希望と連帯をひろげ、いのちの尊重、和解と平和の探求を呼びかけます。

2022年10月3日
2022年日本宗教者平和会議 in 朱鞠内・旭川

ロシアのウクライナ侵攻を厳しく非難する
ただちに軍事行動をやめ、撤兵せよ


2022年2月24日  日本宗教者平和協議会

ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部地域で親ロシア勢力が「独立」を宣言している二つの地域を独立国と承認したのにつづいて「派兵要請」を受けたとして「全面侵攻を開始」しました。こうした行動は、戦争に反対し、問題の平和的解決を図ろうとする国際社会の努力を真っ向から踏みにじるものであり、断じて許されない違法な侵略行動であり厳しく抗議するものです。
私たちは、「原水爆時代においては宗教者が信仰の名において国際的な現実にかかわりなく過ごすことは許されません」「人類絶滅の外に立つ信仰ということはありませんし、今日、信仰の名において現実を回避することによって自己の平安を得るということができるでしょうか」(第二回世界宗教者平和会議「東京宣言」)の理念に立ち、日本の侵略戦争の反省、宗教者の戦争責任の反省にもとづき「平和の祈りを行動の波へ」と被爆国の宗教者として核兵器のない平和で公正な世界の実現をめざしてきました。
今回のロシアの軍事行動は国連加盟国の主権、独立、領土尊重、武力による威嚇の禁止などを明記している国連憲章に明確に反するものであり、領土拡張など軍事力で現状を変更することは国際社会で絶対に許されません。
チェルノブイリ原発をその制圧から直ちに解放し、核兵器の使用とその威嚇につながるいかなる行動もおこなわないよう強く求めるとともに、「独立」承認の取り消し、即時の軍事行動停止と撤兵、そして核兵器の禁止・廃絶に踏み出すよう強く要求するものです。
 岸田政権にたいしてプーチン大統領への平和の秩序の侵害を許さない毅然とした姿勢とともに核兵器禁止条約の批准、「核の傘」からの離脱、憲法9条にもとづく平和外交を強く求めるものです。

核兵器禁止条約への50カ国の批准を心から歓迎し、日本政府に参加を求めます

2020年1025日   日本宗教者平和協議会


各国政府と被爆者を先頭とした市民社会の奮闘により、核兵器の非人道性を告発し、違法化する核兵器禁止条約の批准国・地域が50カ国に達し、来年1月22日に発効することとなったことに被爆者、核被害者の方がたと喜びを共にし心から歓迎するものです。
核兵器禁止条約は核兵器の使用は武力紛争の際に適用される国際法に反するとして、その開発と保有、使用、さらに威嚇や他国の核兵器の自国への配備なども全面的に禁じています。私たちは、核兵器保有国を政治的・道義的に追い詰め、被爆者のサーロー節子さんが言われた「核兵器の終わりの始まり」という人類史の新たな歩みの時を迎え、改めて「核兵器のない世界」へ草の根で引き続き全力をつくす決意です。
被爆者の方がたが命をかけて訴え続けてこられたことが世界を動かし、核兵器は違法の時代を迎えようとしていますが、唯一の戦争被爆国の日本政府が核保有国と非核保有国の「橋渡し」役を担うと核兵器禁止条約の交渉会議に参加せず、核抑止力論に立ち同条約に背を向けていることに怒りを禁じえません。抑止力論はいざという時には核兵器を使用するというのがその本質です。
私たちは、日本政府が人類の未来に対する責任として核兵器禁止条約に署名、批准し、核兵器廃絶に向けた「橋渡し役」をすることを強く求めるものです。同時に、核保有国に核軍備撤廃の義務とその合意の履行を求めるものです。
菅内閣がこの条約に署名しないのであれば、市民と野党の共同で禁止条約に参加する政府の実現のために力をつくします。
日本宗平協は結成以来、核兵器廃絶を掲げて被爆の実相を広げながら取り組み、また、1964年以来毎年3月1日に久保山愛吉墓前祭を主催し、8月には「いのちを選びとる断食の祈り」を広島で取り組んできました。引き続き原水爆禁止運動をすすめるみなさんと共同し核兵器のない世界をめざして力を尽くしていく決意です。
私たちはまた、新しく呼びかけられる日本政府に核兵器禁止条約への参加を求める一点での署名を心から歓迎し、「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現と核兵器廃絶の先頭に立つ被爆国にふさわしい日本の実現のために国民的事業としてこの署名に取り組むことを日本の宗教者の皆さんに心から呼びかけます。

学術会議の任命拒否の撤回を求めます

2020年10月5日    日本宗教者平和協議会


 菅義偉首相は日本学術会議の推薦した新会員候補の6人の任命を拒否しました。同会議の歴史で一度もなかったこの暴挙について加藤勝信官房長官は1日の会見で「政府が責任をもって人事を行うことは当然」で「会員の人事などを通じて一定の監督権を行使するのは法律上可能だ」と正当化しました。
 任命を拒否された6人は、安倍政権が強行した安全保障関連法や特定秘密保護法、さらに沖縄辺野古新基地建設など政府方針に反対の意見を表明してきた学者であり、政府の意に沿わない見解を持つ学者を排除する暴挙は断じて容認することは出来ませんし、憲法23条が保障する「学問の自由」を侵害する極めて危険な本質を表しています。6人のなかにはキリスト教学の京都大学の芦名定道教授も含まれています。
 安倍政権は最高裁の裁判官人事や検察庁人事に介入するなど司法権の独立を侵害し、また、メディアを支配してきました。菅政権は発足早々に、常軌を逸した学問・研究の自由を侵害してきました。ことの本質は学術会議や大学などを政府の言うがままに支配したいということにあります。
 学問の自由への乱暴な介入、思想統制の動きはファッショにほかならず、絶対に許すわけにはいきません。歴史の教訓が示すとおり、真理の探究、学問の自由への介入は独裁と戦争への道であり、次には、信教の自由、政教分離原則への侵害が予測されることを忘れるわけにはいきません。
 学問の自由と日本学術会議の独立性を守るため、学問の自由を踏みにじる違法行為である菅首相の任命拒否のすみやかな撤回、自由と民主主義の回復を強く求めます。

日本宗教者平和協議会(日本宗平協)は本日、検察庁法改定案の採択断念に関して下記のとおり事務局長名で声明を発表いたしました。ご高配のほど、よろしくお願い致します。

声明 検察庁法改定案の今国会採択断念にあたって

2020年5月20日
日本宗教者平和協議会
事務局長  森 修覚

 政府・与党は、検察の独立や政治的中立を脅かす特定の検察幹部の定年を内閣の意向で特例的に延長することを可能にする「国家公務員法等の一部を改正する法律案」の今国会での採択を断念しました。
 権力は監視しないと腐敗することをこの法案も示しました。元検事総長ら検察OBが声をあげ「検察の力を殺(そ)ぐことを意図している」と警告した意見書は、安倍首相の勝手な解釈変更の言動を「朕は国家なり」と述べたルイ14世になぞらえて厳しく批判したことは、反対世論の急速な広がりを後押ししました。
 国会審議を通じて、この改定案が検事長らの定年延長に内閣が恣意的に関与するなど、憲法の基本原理である三権分離の原則に反し、法治主義を脅かすものであると安倍・自公政権を追い詰めた野党の国会論戦や弁護士会などの意見表明などで明らかになり、時の政権が検察官人事を恣意的に運用することになれば職務を歪め、政権の意向に沿った検察権の乱用により、政治的立場、思想、信仰、信条に対する不当な弾圧が引き起こされる可能性も否定できないと、コロナ禍というなかで反対世論のうねりが急速に広がり、今国会での法案採択断念に追い込みました。
 SNSでの「#検察庁法改正案に抗議します」の市民の声の高まりと影響は画期的なものであり、政治の流れを変えうることと特筆されるべきです。
 公明党の「公明新聞」で「『火事場泥棒』との批判は当たら」ず、「黒川検事長の定年延長と、今回の法改正は無関係」とする解説記事を載せるなど、法案推進の姿勢を崩さず、「#公明支持止めます」の投稿も殺到しました。
 検察の歴史を顧みるに、多くの冤罪事件に手を貸してきた負の歴史を見過ごすことはできないことを一言しておきたいと思います。
 安倍政権はこの法案の成立を諦めたわけではなく、今秋の臨時国会で採決・成立を狙っています。宗教者として世論を一層高め、引き続き、検察幹部の定年延長の特例と本年1月31日の黒川弘務東京高検検事長の定年延長の閣議決定の撤回を求めるとともに、今回の政治責任をとり安倍総理の辞任を強く求めるものです。

2018年7月豪雨災害お見舞い申し上げます


 西日本を中心とした記録的豪雨により各地で土砂災害、河川の浸水・氾濫などが相次ぎ、210人もの人命が失われ、20人以上の方々の安否が不明となっています。寺院教会など多くの宗教施設も甚大な被害を被っています。
 今後も被害の拡大が予想されます。猛暑が続くなか、約5000人もの方々が避難所に身を寄せており、断水なども続いています。
 豪雨災害にあわれたみなさまに心からお見舞い申し上げます。また、亡くなられた方々、ご遺族の皆さまに心から哀悼の意を表します。
 捜索・救助や住民支援ボランティアを担ってくださっている方々に心から敬意を表します。
 政府と自治体には、人命救助に全力を傾注するとともに、かつてない被害規模の被災地住民のすみやかな救済、適切な避難所の運営、被災者の方がたの心のケアや健康確保など、個人の尊厳や生存権の保障のために全力を傾注するよう強く要請するものです。

2018年7月15日
     日本宗教者平和協議会   事務局長  森 修覚

報道各社 御中

 日本宗教者平和協議会(日本宗平協、荒川庸生理事長)は本日、犯罪を計画段階で処罰する共謀罪の趣旨を盛り込んだ「組織的犯罪処罰法改正案」(「テロ等準備罪」法案)が自民、公明、維新などにより参院本会議で採決が強行されたことに対し、下記の抗議声明を発表しましたのでお知らせいたします。


声明「共謀罪」の採決強行に抗議します

2017年6月15日 日本宗教者平和協議会


 「テロ対策」を口実に、実行されなくても計画の話し合いの段階で取り締まり、処罰できるなど、憲法の保障する思想・信条、内心の自由を侵害する共謀罪法案を参院本会議で自民党、公明党、維新などが委員会審議を打ち切り、採決を強行しました。
私たちは、生きとし生けるものの命と権利を何よりも尊重する宗教者として「共謀罪」法案の採決強行に強く抗議するとともに、その廃止を求めます。
行為がなくても行為者の危険性を処罰した戦前の「治安維持法」と同様、個人の「こころ」の内面に踏み込んで処罰するという共謀罪は憲法違反であり、私たちは絶対に容認することはできません。
また、「組織的犯罪集団」については、捜査当局が恣意的な判断で認定することができ、市民団体はもとより、私たちにとってかけがえのない信仰・教理にまで踏み込み宗教団体・教団までもがいつの間にか捜査対象とされかねません。
戦時下、反戦平和を願い、時の政府がすすめる国策に疑問を抱き、抵抗する政党や労働組合や自由主義者はもとより、多くの宗教教団、宗教者も徹底的に弾圧されました。密告と監視社会の横行など、深刻な人権侵害、基本的人権が蹂躪、宗教弾圧の再来を許すわけにはいきません。
私たち宗教者は、信仰の発露として、ふたたび戦争協力の誤りをくり返さないためにも、戦争法(安保関連法)を強行し、秘密保護法とともにこの「共謀罪」が戦争反対のみならず、政府の方針に異を唱える国民の正当な運動に対する弾圧の道具とされないようその廃止を強く求めるものです。
立憲主義を破壊し、「戦争する国」づくりへと暴走する安倍自公政権による「戦争する国」、憲法を否定する国づくりを許さず、信教の自由、思想・良心の自由など基本的人権を守るために奮闘する決意です。

核兵器禁止条約実現へ=歴史的な国連会議
被爆国日本国民の願いに背を向ける日本政府に抗議する


 3月27日からニューヨークの国連本部で開かれていた核兵器を法的に禁止する条約実現を主題にすえた歴史的国連会議の第一会期が115カ国以上の政府と市民社会の積極的な参加で「核兵器のない世界」を達成するための法的措置について熱心な議論が展開され、31日終了しました。
 会議のエレン・ホワイト議長(コスタリカ)は記者会見で、「破壊的な人道的影響を想い起こさせる」被爆者の演説を高く評価するとともに、合意文書の中核となる禁止事項について建設的な意見交換ができ、第2会期が終わる7月7日までに法的拘束力のある条約案に合意することが達成可能な目標になったと述べましたが、私たちは、この議論と成果を心から歓迎するものです。
 一方、日本の高見沢軍縮大使は、条約交渉は「国際社会の分断を一層深め、核兵器のない世界を遠ざける」と指摘し、「現状では交渉会議に建設的かつ誠実に参加することは困難だ」と述べ交渉不参加を表明しました。岸田外相も28日、人類絶滅をもたらす非人道的兵器である核兵器による威嚇や使用を「安全保障」政策と強弁し、「今後この交渉には参加しないことにした」と表明しました。
 国連会議では、日本被団協の藤森俊希さんとカナダ在住のサーロー節子さんの二人の被爆者が発言しました。藤森さんは、核保有国とその同盟国が核兵器廃絶条約をつくることに反対し、唯一の戦争被爆国の日本が核兵器禁止条約の交渉会議の招請を求める国連決議に反対したことに「心が裂ける思いだった」と述べ、「ヒバクシャ国際署名」を広げ、「法的拘束力のある条約の成立と発効に力を尽くそう」とよびかけした。
 サーロー節子さんは、条約制定に向けた議論で恩恵を受ける未来の世代の存在だけでなく、広島・長崎で亡くなった人たちの夢は、「生きているうちに核兵器を廃絶すること」という被爆者の思いを心に刻んで交渉してほしいと述べ、「核兵器は非人道的で違法だという国際基準を確立してほしい」と条約の必要性を訴えるとともに、アメリカなどの核保有国に加え、その「核の傘」に頼る日本政府も交渉に参加していないことについて、「『核の傘』に隠れるのでなく、日本政府は国民の意思に応える独立した行動をとるべきです」と厳しく批判しました。
日本政府は、何らの政策提言もせず、単に核兵器禁止条約は非現実的、核保有国が参加しないもとで核兵器禁止条約をつくることは、「分断をつくる」と述べるなど、単に核保有国が反対することについては何もするなという唯一の戦争被爆国にあるまじき、被爆者と被爆国日本国民の願いに背をむけるものと指摘せざるを得ません。
 私たちは、日本政府の国連会議不参加に厳しく抗議するとともに、被爆者と国民の声に真剣に耳を傾け、核兵器廃絶の願い実現のために誠実に努力するよう強く求めるものです。
 私たち宗教者はいま、いのちの尊さの前で態度決定が厳しく問われています。私たちは、条約原案が示される6~7月の次回会期にむけて「ヒバクシャ国際署名」を宗教界に広げ、核兵器禁止条約の早期締結のために被爆国日本の現代に生きる宗教者としての役割を果たすための決意を新たにするものです。

2017年4月1日   日本宗教者平和協議会

2017年3月21日

日本宗教者平和協議会 事務局長  森 修覚
談話

 「共謀罪」である「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の閣議決定に抗議し、撤回を求める


 安倍政権は本日、「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法の改正案を閣議決定しました。
今回閣議決定した法案は「共謀罪」との呼称を使わずに「テロ等準備罪」であるから、過去3回廃案となったものとは違う主張していますが、東京オリンピック開催を理由に「テロ」の文言を加え、見かけばかりを変えたものです。閣議決定に抗議し、その撤回を求めるものです。
「テロ対策」は口実で、現実に犯罪行為がなくても、相談・計画など準備行為をおこなったこと、犯罪の共謀を処罰するという「共謀罪」と本質は何ら変わりありません。
近代刑罰法の原則を踏みにじり、合意という個人の「こころ」の内面に踏み込んで処罰するというのは、まさに現代版「治安維持法」であり、憲法違反の法案を絶対に容認できません。
話し合いや相談したことをもって処罰することは、憲法が保障する内心の自由や思想信条の自由を侵害するものであり、「組織的犯罪集団」については、恣意的な判断で捜査当局が認定することができ、市民団体はもとより、私たちにとってかけがえのない信仰・教理にまで踏み込み宗教団体・教団までもがいつの間にか捜査対象とされ、日常的な監視が横行するなど深刻な人権侵害、基本的人権の蹂躪を招きかねません。
戦前戦中のような密告と監視社会に逆戻りさせてはなりません。
ひとたび、権力が治安立法を手にすればその運用は恣意的に拡大されることは、侵略戦争の下でもっぱら行為ではなく思想を取り締まった「治安維持法」の歴史が証明しています。
戦時下、反戦平和を願い、時の政府がすすめる国策に疑問を抱き、抵抗する政党や労働組合や自由主義者はもとより、多くの宗教教団、宗教者も徹底的に弾圧されました。宗教弾圧の再来を許すわけにはいきません。
安倍政権による憲法改悪の企てとともに、戦争法(安保関連法)を強行し、秘密保護法とともにこの「共謀罪」が戦争反対のみならず、政府の方針に異を唱える国民の正当な運動に対する弾圧のやいばとされかねません。安倍政権による「戦争する国」、憲法を否定する国づくりの暴走を許さず、信教の自由、思想・良心の自由など基本的人権を守るために奮闘する決意です。

オスプレイは直ちに撤去を

2016年12月14日
日本宗教者平和協議会

13日夜、沖縄県の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)配備の垂直着陸機MV22オスプレイが同県名護市安部の沿岸部に墜落しました。防衛省は国内初の重大事故を小さく見せようと「不時着」と発表しましたが、安部沿岸の岩礁でバラバラに大破した無残な姿をさらす機体を見れば墜落であることは明白です。
マスメデアもこの「不時着」を垂れ流し、米軍、安倍政権擁護していることは国民を愚弄するもので許せません。
オスプレイはいかに危険であるかが明らかになった以上、配備は撤回、高江のヘリパット基地建設は中止、辺野古新基地建設の中止を求めます。
去る2日にヘリパット基地はいらない宗教者の集会・抗議を東村・高江で行ってきた日本宗平協として断固抗議します。

北朝鮮の核実験を糾弾する

                     
2016年9月9日
日本宗教者平和協議会 事務局長  森 修覚

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は本日、安保理決議や6カ国協議の共同声明など度重なる国際社会の批判や警告にもかかわらず、5回目の核実験を強行した。
北朝鮮は、核弾頭をミサイルに搭載するために「小型化・軽量化」された核弾頭を必要なだけ生産できるようになったと、核兵器の実戦配備への能力向上を誇示している。
 核武装強化の道を進むことは自らの国際的孤立をいっそう深めるだけである。
北朝鮮のこの度の核実験とこの間の弾道ミサイル発射に厳しく抗議し、糾弾するとともに、いっさいの核・ミサイル開発の即時中止を求めるものです。

 核兵器の廃絶、平和の追求は人類共通の悲願であり、核兵器は、いかなるものの手にあっても許されない。また、いかな状況のもとでも決して使用されてはならない。
いま、最大の焦点は核兵器を禁止し、廃絶するための条約にある。核兵器の廃絶は、人類の生存にかかわる緊急課題であり、国際社会では、核兵器の非人道性の議論におされ、「核兵器のない世界」へ、核兵器を違法なものとして禁止し、廃絶する法的拘束力のある措置を求める流れが広がっている。
日本政府には、アメリカの「核抑止力」依存をやめ、核保有国の代弁者でなく被爆国にふさわしい役割を果たすよう強く求めるものである。

「内なる心の平和と外なる世界の平和を」「平和の祈りを行動の波へ」をスローガンに、宗派・信仰の相違をこえて団結し、不殺生と慈悲、平和を求めるこころで核兵器廃絶、原発ゼロなどの共同の取り組みをすすめてきた。
被爆者は、「後世の人びとが生き地獄を体験しないように、生きている間に何としても核兵器のない世界を実現したい」と訴えている。核兵器を禁止し、廃絶する条約の交渉開始を求め、世界で数億の署名を目標にした「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」(「ヒバクシャ国際署名」)を広げる決意である。

安倍晋三首相の「核先制不使用」反対の発言に抗議する

                                   2016年8月18日 日本宗教者平和協議会

 安倍晋三首相は、オバマ米大統領が検討している核兵器の先制不使用宣言について、「抑止力を弱める」と反対する意向を伝えていたと報じられています。
米紙ワシントン・ポストによると、安倍首相はアメリカが先制不使用を宣言すると、北朝鮮のような国々への抑止力を弱めることになるとして、宣言に反対する意向を自ら伝えたと報じています。
 「抑止力」の名において、軍備の高度化や拡張をすすめ、核兵器の使用を正当化する安倍首相の姿勢は、「核のない世界」に逆行し、安全保障どころか、アジアと世界の緊張と核兵器使用の危険を増大させるものといわなければなりません。
国連総会においてくり返し確認されているとおり、核兵器の使用を防ぐ唯一の方法は核兵器の完全廃絶以外にありません。
私たちは、安倍首相の核兵器の先制不使用宣言に反対という被爆国政府にあるまじき許しがたい姿勢に、怒りを込めて抗議するとともに、発言の撤回を求めるものです。
安倍首相は先日、広島と長崎の平和式典において、広島・長崎で起こった悲惨な経験を二度とくり返させてはならないと、「核兵器のない世界」に向けて「努力を重ねていく」と表明しました。しかし、日本政府が実際に行っていることは、国連総会で核兵器禁止条約を求める決議に棄権するなど世界の大勢にも、国民の願いにも反する被爆国政府にあるまじきものです。
被爆者は、「ふたたび核兵器を使うな」、「核戦争起すな、核兵器なくせ」と自らの被爆体験を語り、力の限り核兵器の恐ろしさ、残酷さを語り広げてこられました。
 私たちは、広島・長崎の被爆者が呼びかけた、「核兵器を禁止し、廃絶する条約の締結を求める国際署名」の前進に力をそそぎ、核兵器禁止条約を求める世論を高めるとともに、いのちの尊さを覚え、「殺し、殺される」戦争を二度とくり返してはならないと祈念する宗教者として、安倍首相の神仏をも畏れず、平和実現を核兵器に恃(たの)むがごとき愚見に対する警告と抗議の意思を強く表明するものです。

<東京都知事選挙>

野党統一候補の鳥越俊太郎さんを推薦します

2016年7月14日 日本宗教者平和協議会

「神を信じるものも信じない者も」は、ナチス・ドイツへの抵抗をよびかけたフランスのレジスタンスの詩人ルイ・アラゴンの言葉です。
先の参議院選挙で私たちは、憲法違反の安保法制=「戦争法」の廃止、立憲主義を取り戻し、安倍自公政権の改憲を許さないという「大義」のためのたたかいを市民と野党が力をあわせて押しすすめ、重要な成果を収めました。

 都民の生活を第一に考えるべき都知事が、カネの問題などで相次いで短期で辞任するという異常な事態のもとで、いよいよ東京都知事選挙が告示されました。
私たちは、この都知事選挙で、市民と野党共闘をさらに発展させ、「あなたに都政を取り戻す」ために立候補された鳥越俊太郎さんを推薦し、「聞く耳を持つ知事」「住んでよし、働いてよし、環境によしの東京を実現」「〝困った〟を希望に変える東京へ」全力をあげる決意です。

これまで2度にわたって立候補され、大奮闘・大健闘された元日弁連会長の宇都宮健児さんは、野党4党が「統一候補」として鳥越さんを支援するという流れのなかで、立候補辞退という苦渋の決断をされたことに、ご本人はもとより、ともにたたかってこられた人びとに心から敬意を表するものです。

 私たちは、宇都宮さんの政策をきちんと引き継ぐ鳥越俊太郎さんを、「平和の祈りを行動の波へ」と宗教者のなかに支持をひろげ、何としても東京都知事に押し上げる決意です。

 金銭問題などで相次いで辞任に追い込まれた知事を推薦してきた自民、公明両党が今回推薦するのは、告示直前まで東京電力の社外取締役を務めていた人物で、東電福島第一原発事故の責任逃れに終始し、原発イエスの人物です。また、元防衛大臣の女性候補も、安倍改憲を容認し、日本の核武装について「国際情勢によっては検討すべき」と主張(03年11月)するなど、二人とも首都東京の知事にふさわしくありません。

 鳥越俊太郎さんを重ねて推薦するものです。鳥越さんを何としても東京都知事に押し上げ、首都東京から全国に市民と野党共闘をさらに発展させ、日本の政治の流れを大きく変えましょう。

アピール  被爆者とともに核兵器のない世界を
「内なる心の平和と外なる世界の平和」のために―祈りを行動の波へ

2016年2月29日 被災62年3・1ビキニデー宗教者平和運動交流集会



 62年前の1954年3月1日、アメリカが中部太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁でおこなった水爆実験で焼津を母港とするマグロ漁船・第五福竜丸をはじめ多くの船が被災し、「放射能雨」など地球規模の深刻な汚染と被害を引き起こしました。その年の9月23日、第五福竜丸の無線長・久保山愛吉さんが「原水爆の被害者は私を最後にしてほしい」と言い遺して亡くなりました。
 私たち宗教者は、広島・長崎の被爆者の願いを共有し、折鶴行脚(63年)など被爆者援護法を求める運動の一翼を担い、1964年以来、被爆の実相を伝え、広げながら、久保山愛吉さんの墓前祭を純粋な宗教的行事として主催し、核兵器廃絶への決意を新たにし合ってきました。
 昨年末の国連総会では、核兵器を非人道的な兵器として全面廃絶することを求める決議「核兵器の人道上の帰結」が初めて採択されるなど、核兵器の非人道性を告発し、核兵器禁止条約締結を求める流れが引き続き広がっています。
しかし、日本政府は、アメリカの「核抑止力」「核の傘」が必要との立場をとり、核兵器禁止を求める国連決議にすべて棄権するなど、被爆国にあるまじき態度をつづけています。
 核兵器国はこの世界の流れに追い詰められ、反発を強めています。これを打ち破り、核兵器の非人道性から核兵器禁止を求める流れを大きく発展させ、「核兵器のない世界」へと前進させるために被爆の実相と核兵器廃絶を求める被爆者の声を国内外に広げる取り組みをさらに広げることが求められています。
 主権在民や信教の自由、政教分離を定めた日本国憲法を守り、原発再稼動、沖縄県民の創意を無視しての辺野古新基地建設を許さず、「戦争する国」ではなく、いま取り組まれている「戦争法廃止を求める2000万人統一署名」を成功させ、そのうえで、被爆者が準備している核兵器廃絶を求める新しい国際署名の運動を宗教界でも共同を広げて取り組みましょう。
一方、「新しい時代にふさわしい新憲法」の制定を運動目標とし、宗教関係者が役員の約3分の1を占める「日本会議」が、1000万人の賛同署名を集めるために作った別働組織「美しい日本の憲法をつくる国民の会」がいま神社境内などで、「私は憲法改正に賛成します」という文言だけの署名に取り組んでいます。
 「戦争法」強行でアメリカの戦争に世界中で協力する体制整備に乗り出し、憲法9条との矛盾が極限に達する中、安倍晋三首相の憲法改悪に向けた前のめりの姿勢が加速し続けています。「国防軍」保持や「緊急事態条項」など「戦争する国」づくりの狙いと一体の憲法の明文改憲をめざす安倍自公政権の暴走をくい止めましょう。
 憲法違反、立憲主義と民主主義を踏みにじる「戦争法」は一刻も放置できません。国民の切実な願いに応え、野党各党は来る参院選挙で「戦争法」廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回、安倍政権打倒などをめざしての選挙協力に合意しました。この合意を心から歓迎するものです。
 戦争ノー、核兵器ノー、原発ゼロ、地球環境の保全は、国民多数の一致した願いであり、「命を尊び、育む」宗教者のとるべき道です。この切実な願いの実現のために諸階層の人びととの連帯と共同を発展させ、「祈りを行動の波へ」と広げ、憲法を守る世論と運動をさらに宗教界に広げましょう。

北朝鮮の水爆実験を厳しく糾弾し、核開発計画の放棄を要求する

2016年1月6日 日本宗教者平和協議会



 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)政府は本日、水爆実験を強行したと発表し、「水爆の実験はアメリカをはじめとする敵対勢力から、国の自主権と生存権を守り、朝鮮半島の平和と安全を保証する自衛措置だ」と正当化し、「核抑止力を質的、量的に絶えず強化していく」と主張した。

 私たちは、宗教的倫理性に基づき核兵器全面禁止・廃絶の実現を求めて取り組んできたものとして北朝鮮の水爆実験の強行という許しがたい暴挙を厳しく糾弾するとともに、北朝鮮政府にただちに核開発計画を放棄するよう強く要求する。

 国際政治ではいま、核兵器の非人道性を告発し、その使用の禁止と廃絶を求める流れが急速に広がっています。私たちは被爆国日本の宗教者として、被爆者とともに核兵器が2度と使われないために、核兵器の完全廃絶、「核兵器のない世界」の実現にむけてひき続き奮闘する決意です。

 日本政府が核保有国が反対していることを理由に、核兵器禁止条約に賛成せず、アメリカの「核の傘」のもとで、自衛のための核使用は認めるという、被爆国にあるまじき立場をとっている。
私たちは、核破局の危険を除去するために、「核抑止力」論を放棄し、ただちに核兵器禁止条約の交渉を開始するよう強く求めるものです。

翁長知事の、辺野古埋め立て承認取り消しを支持します

2015年10月15日 日本宗教者平和協議会



 翁長雄志沖縄県知事は13日、名護市辺野古の米軍新基地建設の埋め立て承認を取り消しました。
 私たちは、翁長知事の第三者委員会による検証結果と、この間の選挙でくり返し示された圧倒的な沖縄県民の願いに応えた勇気ある今回の決断をこころから歓迎し、全面的に支持・連帯を表明するとともに、安倍政権に沖縄県知事のこの判断を尊重し、従うよう強く求めるものです。
 私たちはこの間、沖縄の宗教者と連帯し続けてきました。先月も代表を派遣し、沖縄の宗教者とともに名護市辺野古のいのち豊な自然環境を破壊し、戦争のための最新鋭の米軍新基地建設を許さず、米軍に不当に奪われたすべての土地の返還と、虐げられてきた人権侵害の回復を求めて「辺野古の海―祈りの航海」に取り組みました。
 戦争のための新たな米軍の出撃基地の建設は絶対に許されません。
 私たちは安倍内閣に、沖縄県民の8割を超える「県内移設反対」、7割以上の「埋め立て承認取り消し支持」の意思を尊重し、新基地建設の断念、普天間基地の無条件返還という人間の尊厳に関わる問題の解決をはかるよう強く求めます。
 最後に、防衛局が「私人」になりすまして「不服審査請求」し、国土交通相が「承認取り消しの執行停止と無効」の採決をおこなうなどという地方自治、法治主義、民主主義をないがしろにする茶番は断じて許されないこと、それは、「海外で戦争する国」づくりの安全保障関連法(戦争法)の「可決・成立」と同様に無法であることを指摘しておきます。
 私たちは、「殺すな、殺されるな、殺すことを許すな」という共通の教えにたって、引きつづき沖縄県民・宗教者と連帯し米軍新基地建設阻止のために取り組む決意です。


「戦争法案」採決強行を断固糾弾する

2015年9月19日 日本宗教者平和協議会



 自民・公明など政府与党は本日未明、国会を包囲する抗議行動と、全国各地の国民の反対と怒りの声を踏みにじり、特別委員会での審議などといえない言語道断の暴挙の「採決」をもとに、ひとかけらの道理もなく参議院本会議において海外で戦争する国へ道をひらく「戦争法案」を可決・成立させた。
 私たちは、憲政史上最悪の憲法破壊の今回の暴挙を断固糾弾し、撤回を強く要求して引き続き奮闘する決意を表明する。
 安倍首相自身、集団的自衛権の行使を容認する立法事実さえ説明できず、審議すればするほど、海外で武力行使する憲法違反の法案であることが明らかにされ、加えて内部文書で自衛隊中枢部が、法案が提出される以前から法案を先取りした戦争法の具体化を進めていたことなど自衛隊の暴走も浮き彫りにされ、その真相解明もないままに成立を強行するなど断じて許されない。
 戦争法案の集団的自衛権の行使は、日本が直接に武力攻撃を受けていないのに、「存立危機事態」を口実に、第三国による他国への武力攻撃を排除するために日本が武力行使することが可能になるというものである。
 いま、戦後かつてないほどに、いてもたってもいられないという広範な国民各界各層の自発的なたたかいは日毎に広がり、「安全保障関連法案」と称する戦争法案に反対し、また審議が尽くされていないとして今国会での成立に反対との声はどの世論調査によっても6割から7割にも及んでいる。 
 戦後70年間、日本国憲法の下で培われてきた憲法の平和主義、立憲主義、そして民主主義を破壊するこの法律の存在は、憲法98条の「この憲法は、国の最高法規であって、その条項に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」と明確に定めるように断じて許されない。
 私たち宗教者は、「殺すな、殺させるな、殺すことを許すな」とのそれぞれの教えに固く立ち、命の道と死の道のわかれ道に立たされていることを自覚し、かつての侵略戦争と植民地支配に協力・加担した深刻な反省・懺悔のうえに、そしてまた一人の主権者として、安倍政権打倒、憲法違反の法律を断じて許さないために引き続き全力をつくす決意である。

安倍首相と自民・公明の与党による戦争法案の採決強行を糾弾し、廃案を要求する

2015年7月15 日 日本宗教者平和協議会



 安倍政権と自民・公明の与党は15日、日本国憲法の平和主義を真っ向から蹂躙し、憲法違反の戦争法案(安全保障関連法案)を衆院安保法制特別委員会で数を頼みに採決を強行しました。
 戦前・戦中の宗教教団の協力・加担、70 年前の悲惨な戦争の反省に立ち、「殺すな、殺されるな」「平和の祈りを行動の波へ」と取り組んできた私たち宗教者は、戦争法案の採決強行を糾弾し、同法案の廃案を強く要求します。 衆議院での審議を通じて、憲法違反の法案は時間をかけて議論しても違憲であり、戦争法案は憲法の前文や武力行使を禁じ、交戦権を放棄した憲法9条と両立しないことが次々と浮き彫りにされました。政府が、憲法違反の法案を国会に提出し、成立させようとすること自体許されないことは自明のことです。
 憲法学者に加え、内閣の憲法解釈を担った元法制局長官からも法案の違憲性が指摘されました。安倍首相は強権的な姿勢で「安保環境の変容」などと破綻済みの言い分をくり返し、大臣答弁は混迷を深め、政府の説明は完全に破綻しました。加えて、自民党の言論弾圧の資質も明らかになるなど、国民のきびしい批判と反対、疑問が広がっています。
 平和主義だけでなく立憲主義や国民主権でも憲法を守る姿勢がない安倍政権が国民のなかで孤立していることは、世論調査の結果からも明らかであり、国民の大多数が憲法違反と考える法案は廃案以外にありません。
 自民党は多数の議席を確保していますが、昨年末の総選挙で同党が獲得した得票率は17%にすぎず、この「虚構の多数」をかさにした横暴を断じて許すわけにはいきません。また、公明党が、結党以来最大の売りにしてきた「平和の党」が看板倒れであり、同党の無責任で反国民的な姿が、あらためて浮き彫りとなりました。

 軍事同盟は時代遅れです。外交努力を怠り、安易に武力行使をすれば、そこから果てしない暴力の連鎖が始まることは明らかであり、日本国憲法は、日本が歩むべき未来に則した極めて現実的な指針であります。
 戦後70 年の節目の年を迎え宗教教団や団体が、平和を希求し、戦争法案反対の声をあげています。平和を求める祈りをあわせ、戦争法案の撤回、廃案という歴史的責務を果たすためにひきつづき奮闘する決意です。

憲法破壊の暴挙、「戦争法案」の閣議決定、国会提出に抗議し、その撤回を要求する

2015年5月15 日 日本宗教者平和協議会



 安倍内閣は14日、国民多数の反対の声を踏みにじり、これまでの地理的制限などを撤廃し、時・場所を問わない自衛隊の恒久的な海外派兵と、武器使用容認などを含む、アメリカなどとともに「海外で戦争できる国」にする「平和安全法制整備法案」と「国際平和支援法案」を閣議決定し、15日国会に提出しました。
 これは集団的自衛権行使容認の「閣議決定」(昨年7月1日)と、「切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同対応」を打ち出した日米新ガイドラインの具体化として、「殺し、殺される国」へ日本を変質させ、憲法9条を根底から破壊する戦後最悪の暴挙です。私たちはこれらの法案に強く抗議し、その撤回を要求します。

 そもそも海外での武力行使はそれ自体、国際紛争の解決に当たって武力行使を禁じ、交戦権を放棄した憲法9条が禁止する行為そのものであり、法案は日本国憲法の根幹に対する許しがたい破壊行為にほかなりません。戦後一貫して保持してきた「海外で武力行使しない」という憲法9条破壊の法案をただちに撤回するよう、重ねて要求するものです。

 戦前・戦中の宗教教団の戦争責任を懺悔告白し、この懺悔から憲法9条擁護、平和運動に50年余にわたって取り組んできた私たちは、戦争に突き進む国づくりと新たな「英霊」づくりを決して許すことはできません。日本の未来、若者の命にかかわる憲法破壊の企てを阻止するために、歴史的責任を果たすべく全力をあげて奮闘する決意です。